阪神・淡路大震災での、多くの犠牲を払ってからの避難生活は満足な物資も得られず、慣れない共同生活で非常に辛いものがありました。
その中で助け合いながら生活していくうちに、ちょっとしたアイデアや知恵がいろいろと浮かんできますが、これらは実際に不自由な避難生活を体験しないと気付かないことばかりです。でもほんの身近なことなので、時とともに忘れられてしまいかねません。そこで、そうした避難生活の知恵を残し、広く伝えていくため、ここで紹介します。
大震災時の断水の時、ありがたいのが自然の川です。兵庫県の住吉川(右図)は都市部でも非常にきれいな水が流れているので、阪神・淡路大震災の時は多くの方が水汲み場所として利用しました。
しかし、非常時なので仕方がない事かもしれませんが、中には川で直接洗剤を使用して洗濯をされていた方もいました。下流域でも水を利用されていますので、できれば汚水が川に流れ込まないところで洗濯するように心がけてほしいものです。
カセット式コンロが非常に役にたった話をよく聞きます。中には鉄板焼きなどで二台並べて使った例もあったようですが、これが非常に危険でした。二台並べるといずれか一方のカセットボンベの位置が中央にくるので、過熱して爆発した例があったようです。
便利性だけでなく、危険性にも充分注意してほしいと思います。
当時避難所では食料や毛布などの物資は、ある程度時間が経てば災害対策本部から提供できるようになりましたが、暖房器具まですぐには配付できませんでした。そういった中で役に立ったのがカイロでした。
また、カイロのなかった人達はカイロの代用品として、空いたペットボトル(円筒より角柱の方が強い)に熱湯を半分くらい注ぎ、蓋をしっかり閉めて二枚のタオルを巻きつけて毛布に入れて暖を取っていました。ボトルは少々歪みますが、破れることはなかったそうです。
ライフラインが途絶した後で、もっとも早く復旧するのは電気のようです。ガスや水道が機能していない間は電気器具が非常に重宝します。
しかし、電気器具のなかには非常に厄介なものもあります。停電した電気が一旦復旧すると通電状態となり、発熱して火災に至 るケースがあるのです。熱帯魚の保温ヒーターがそれです。地震でガラス水槽が壊れてしまったままで通電すると水がないので高温になり、付近の可燃物に着火して火災となるのです。
震災で停電した後は一旦電気ブレーカーを遮断し、電気が復旧した時に確認しながらブレーカーを入れるようにしましょう。
地震直後の避難生活では、毛布などはなかなか手に入れることができないので、新聞紙とゴミバケツ用ポリ袋で簡単な布団をつくれます。これは、新聞紙を丸めてポリ袋に詰めるだけの簡単なものでしたが、この中に足を入れていると空気の層が熱の放散を防いでくれるので、以外と温かく過ごすことができます。その他にも、大きなゴミ袋を体に巻きつけるだけでも少し寒さを防げるようです。
また、寒さ対策としては、これ以外に段ボール箱をたたんで床に敷くと以外と温かく過ごせます。新聞紙を一度丸めてシワを作り、再び延ばして上着と下着の間に入れて着ると空気の層ができて寒さを防ぐことができます。
地震直後は多くの方が着の身着のまま避難したという状況でしたので、パジャマ姿の方もいました。
水道が途絶しているときには、きれいな水はなかなか手に入りません。救急箱にある消毒液などは傷口の消毒に使えますが、食事前の手洗いや子供の顔拭きなどには利用できません。濡れティッシュなどは非常持出し用の防災グッズに必ず加えておきましょう。
避難所の仮設トイレは早いところで3日後、遅いところでも1週間くらいで設置されたようでした。家庭では断水でトイレが使えない場合に備え、浴槽のお湯を捨てずに残しておけばトイレ用水として利用することができます。
バイクや自転車の走行には、必ずタイヤの空気入れや簡易式のパンク修理セットを携帯することをすすめます。路面への落下物で状態が非常に悪いので、必ずといっていいほどパンクします。パンクしたからといって乗り合わせる公共交通機関は、まず動いていません。
天ぷら油を利用した簡易オイルランプの作り方を紹介しましょう。これは、金属の灰皿や空き缶に水を深さ2センチほど入れ、そこへ天ぷら油をさらに2センチほど入れます。(2層に別れて、油のほうが軽いので上になります。)そこへ細く切った布切れをよじって10円玉大のアルミホイルを貫通させてロウソクの芯のように液面に浮かせます。これにライターで火をつけると、10時間前後明かりが確保できます。空き缶をうまくくり抜いて使うと風除けつきオイルランプにも早変わりします。(下の図参照)
ただし、こうした裸火を使う明かりは余震による転倒やガス漏れに十分注意してください。
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